龍神の娘
A Dragon King's Daughter

 待ってくれ。まだ、行かないでくれ!
 僕は幼なじみを引き留めるための言葉を必死に探していた。

 彼女は龍神の娘――。

 "十六歳の朝、迎えに来る"
 彼女が夢の中で繰り返し聞かされてきた言葉が、僕の中でもこだました。

 今日が来ることなんて、初めから分かっていたはずだったのに。

 龍を代々信仰してきたこの村では、毎年、龍神への感謝を込めた夏祭り「龍神祭り」が開かれます。
 誰も龍を見たことはありませんが、現代になっても、水を司る龍神は地元の人々に根強く信奉されてきました。

 龍神を祀る神社には、年に一回、この日だけ、灯りがともされます。

 龍神祭りを楽しんだ日の朝、<僕>はずっと大切に想ってきた幼なじみと別れをしなければなりませんでした。
 彼女は十六年前の龍神祭りの日、この村で龍の子として生を受けたのです。

「十六歳の朝、迎えに来るよ」
 彼女が夢の中で繰り返し聞かされてきた言葉。

 ――今日が、約束の日です。